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オーガニック・キッチン通信 作る人の想いも一緒に「いただきます」
2016年9月号

加瀬農園

うちの土は糠床みたいなもんだよ

DSC_0086.jpg 代表の加瀬嘉男さん

千葉県香取市。都心から車で1時間のところにある加瀬農園の畑に行ってきました。畑に到着するなり、「まずはちょっとコレかじってみて。」と、その場でピーマンをもぎ取ってくださいました。かじってみてびっくり! 瑞々しくて甘い! 「種もそのまま食べられるよ!」。え! 種も? 恐る恐るかじってみるとホントに種まで柔らかい。

DSC_0086.jpg 代表の加瀬嘉男さん

有機野菜を作って25年の大ベテラン

キャプション高く積まれた堆肥の山。ここで夏の間じっくり熟成されます。奥の色の違う山はもみ殻を混ぜ、pHを調整した堆肥

「うちの野菜は本当においしいんだよね~。」と人懐っこい笑顔がチャーミングな加瀬嘉男さんは、都内のオーガニック系のショップやレストランで人気の生産者さん。オーガニックキッチンとのお付き合いも今年で5年目です。

美味しさのヒミツは土づくりに欠かせない堆肥。木くずや落ち葉、豚のフン、もみ殻などをじっくり発酵させて作った堆肥にはバクテリアがいっぱい。これを畑に入れることで「生きた土」になります。「ホント、糠床みたいなもんだよ。良い菌がたっぷりでさ(笑)。」と加瀬さん。配合比率を変えてpHを調整し、野菜によって使い分けています。そのほかにも太陽光マルチ、コンパニオンプランツ、人の手による雑草取りなど、いろいろな工夫と手間暇をかけて有機栽培に取り組んでいます。

キャプション高く積まれた堆肥の山。ここで夏の間じっくり熟成されます。奥の色の違う山はもみ殻を混ぜ、pHを調整した堆肥

野菜づくりは土づくり

キャプション落花生の畑。手作業で丁寧に雑草取りをしています

加瀬家は香取市で代々農業を営み、嘉男さんで4代目。高度経済成長期の昭和の時代、加瀬農園でも化学肥料や農薬を使っていました。しかし、化学肥料で無理やり与えられた栄養で育つ野菜や、どんどん力を失っていく土を見て、「これは違うな」と気づいたそうです。

それから25年。今のようなおいしい野菜ができるまでには相当なご苦労があったはず。「今、こうしておいしい野菜を作れるのは、いろんな良い出会いがあったからなんだよね。それに、『野菜を育てる』なんてとんでもない。こっちが野菜に育てられてるんだよ。」と加瀬さん。「いやー、オレ今、いいこと言っちゃったなあ~。」と言って周囲を笑わせます。

キャプション落花生の畑。手作業で丁寧に雑草取りをしています

笑顔の野菜

キャプション 結婚37年目の加瀬さんご夫妻。「ウチに来てる人たちはみんな『ここの仕事は楽しい』って言うんですよ。」と奥様。「オレって優しいからさ~」と茶目っ気たっぷりに笑う嘉男さん
キャプション 結婚37年目の加瀬さんご夫妻。「ウチに来てる人たちはみんな『ここの仕事は楽しい』って言うんですよ。」と奥様。「オレって優しいからさ~」と茶目っ気たっぷりに笑う嘉男さん

「実はね、福島でしっかり土づくりをして梨を育ててきた農家さんが、原発被害でこの近くの畑に移住してきたんだ。80年もかけて土づくりをしていたのに、それが全部ダメになったんだ。ウチなんて25年。彼の無念を思うとホントに泣けてくるよ。」と涙ぐむ加瀬さん。優しいお人柄が垣間見えました。

現在、奥様や息子さん夫婦や研修生を含む11人のスタッフと野菜づくりをしています。加瀬さんのおいしいニンジンやサツマイモ、大根、キャベツ、サトイモ、紅芯大根など、これから冬にかけてお弁当にたくさん入ります。ぜひこの笑顔を思い出しながら食べてくださいね。

 

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